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第18回●後悔先に立たず〜あるプロレタリア作家のこと(2)


京橋図書館にあった「掘り出し物」。
なんとこれが初めての貸し出し!

 前回、「もっとも、プロレタリア作家の平林彪吾といっても、おそらく知らない人が大部分でしょう。(かく言う記者も、名前すら知りませんでした)」と書いたことを後悔しています。Web新富座の座付記者のブンガク方面の素養の浅さを問われかねない暴言であることを思い知らされたからです。
 共産主義もプロレタリアも、今や色あせた言葉になってしまいました。しかし、そうした思想・信条がらみのカタい話はさておき、平林彪吾という作家は知る人ぞ知る存在で、作品は高く評価されているのですね。
 学芸書林という出版社から30年前に刊行された「現代文学の発見」シリーズの第6巻、「黒いユーモア」全集に平林の「鶏飼ひのコムミュニスト」が収録されています。全18編のうちの1編、しかも本の表紙に作者と作品名が大きく載っています。飯沢匡、武田泰淳、深沢七郎、尾崎翠、佐木隆三、富士正晴、安部公房といった作家名と並ぶのを見て、思わず冷や汗が出ました。
 早速、京橋図書館から『鶏飼ひのコムミュニスト−平林彪吾作品集』(昭和60年、三信図書刊)を借りてきて読みました。
 標題の「鶏飼ひ……」(『文芸』昭和10年6月号)、「輸血協会」(同11年12月号)、そして前回ふれた「月のある庭」(同13年10月号)など、文芸誌に発表された作品はどれも読みごたえがあり、とりわけ「月のある庭」は哀しくも、しみじみとした読後感が残る佳品でした。
 商業誌への発表がプロレタリア作家同盟の解散と重なり、また「鶏飼ひ……」でモデル問題が生じたりと、当時のプロレタリア作家サイドからは厳しい批判があったようですが、早逝していなければ戦後の文学復興期に活躍したのでは、と浅学を恥じつつご紹介させていただく次第。
 本書の巻末に付された、編者・松元眞さんの「父・平林彪吾とその妻のこと」と題するエッセイに記された彪吾未亡人の言葉にも感じ入りました。
 カフェの女給として、作品集『月のある庭』ただ1冊を残して死んだ彪吾を支えた妻。余り売れそうもないその遺作を、三信図書の青山さんという人が出版しようと申し出る。それを、初めは固辞したそうです。
「もう私も年だから、いまから受けるご親切には、返しようがないんだ。返すことの出来ないご好意は、受けるわけにはいかないからねえ」
 眞さんは「明治の女を見た」と書くのですが、今でも東京の下町にはそんな言葉や人情がかろうじて残っているような気がします。
 なお、平林彪吾作品集はまだ版元に在庫があるようですし、日本ペンクラブの「電子文芸館」なるサイトで「鶏飼いのコムミュニスト」を読めます。



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