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第28回●「朝ノ気商会」って知ってますか? 隣町の話-(1)

 たまたま『想い出の作家たち2』(文藝春秋刊)に収録されている子母澤寛(しもざわ・かん)についての1篇を読んで、思わず唸りました。わが新富座にとって、きわめて興味深い事実が語られているのですね。語る人は作家の3男、梅谷第伍氏。
 子母澤さんの代表作は「勝海舟」、「父子鷹」、「新選組始末記」。江戸開府400年記念の年、そして来年のNHK大河ドラマの主人公が新選組というので、あらためて作品が注目されています。  ところでこれは周知の経歴ですが、子母澤さんの祖父は彰義隊の残党。上野で破れ、函館の五稜郭で破れ、北海道の土とともに生きた一徹の御家人でした。
 で、子母澤さんは明治25年生まれ。札幌の北海中学を経て明大法学部卒業後、札幌に帰りいくつかの職業を経たあと上京、後に読売新聞記者になるのですが、初めに勤めたところが銀座1丁目にあった「朝ノ気商会」という妙な会社と言うのですね。なんでも、「人間、いつでも朝起きたときのような新鮮な気分でなければならない?というのが会社のモットー。どこかインチキ臭い人間ばかりいたそうで、社長は後に京都で切腹自殺未遂をしたとか。
 新富橋で楓川(高速道路)を渡れば、銀座1丁目。京橋公園や京橋プラザのある京橋小学校が新富町と同じ小学校区だったこともあって、いわば“ご町内”。きっと子母澤さんの足跡が新富町にも残ってはずなのです。
 いやはや「朝ノ気商会」……夜型人間にとっては耳の痛いモットーですが、何とも気になる事実に出会い、むくむくと持ち前の好奇心が芽ばえました。早や年末。寝正月を返上、早起きして新鮮な気分でじっくりエッセイや作品を点検したいと考えているのですが、さてどうなりますことやら。

 ちなみに同書には向田邦子、山本周五郎、幸田文、今東光、寺山修司など11人の作家について、未亡人や子女の聞き書きが載っているのですが、いずれも思いがけない裏話が紹介されていて、秀逸な読み物になっています。月刊の小説誌『オール読物』に連載されたもの。聞き手は元文藝春秋の編集長だった岡崎満義さん。




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