
川本三郎著『銀幕の東京』(中公新書)

新富橋の上で遊ぶ秀男と順子(同書から)。順子の肩越しに「宝来園茶舗」が見える
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映画やテレビドラマは時代の良き証言者。たとえ物語の本筋とはあまり関係のないバックシーンであったとしても、カメラで切り取られたロケ地の当時の情景は、そのままひとつの時代の町や人々の姿を鮮明に伝えてくれます。
川本三郎『銀幕の東京 映画でよみがえる昭和』には、1960年に公開された成瀬巳喜男監督の「秋たちぬ」(東宝)が取り上げられ、新富町が登場します。
生誕100年ということで、今年は小津安二郎ブームでしたが、再来年は小津と同世代のこの名匠成瀬監督(1905−1969)の生誕100年。小津作品とはいささか持ち味が異なり、時代の風俗とりわけ男と女の濃密な関係が情感をこめて描かれた作品が多いように記憶していますが、「秋たちぬ」もそんな作品のひとつ、加東大介、乙羽信子が主演しています。
ストーリーは省略しますが、長野から上京し銀座裏の八百屋に身を寄せる母子をめぐる物語。近所の旅館で女中奉公する母、男の子が下級生である旅館の娘と遊びに遠征する月島の埋立地など、新富・築地周辺の往時の街並みがふんだんに出てきます。
とりわけ注目すべきなのは、銀座1丁目側から新富橋上の少年と少女を描くシーン。なんと遠景に今も古色蒼然たる輝きを残す「宝来園茶舗」の看板が読みとれるのですね。百聞は一見にしかず。ありし日の新富町を思い出すには必見の作品なんですね。
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