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第38回●あさり河岸の「士学館」道場


「あさり河岸」ここにありき(新金橋際)


江戸の町道場を知るには絶好の読み物。渡辺誠著『幕末剣客秘録』(新人物往来社)

 NHK大河ドラマ「新選組」は、前作の視聴率不振にこりたのか、原作・三谷幸喜、ヒーロー近藤勇役の香取慎吾以下、土方歳三:山本耕史、沖田総司:藤原竜也、坂本龍馬:江口洋介はじめ、脇役・チョイ役にいたるまで若者に人気のタレントや役者が総がかり。しかも幕末・維新に活躍した佐幕派・勤王派入り乱れて和気藹々(わきあいあい)の家族ドラマ仕立てで、とりあえずは視聴率も好調とか。
 で、つい先日、2月29日にはドラマ後のメイキング紀行で、ご町内の地名が出てきました。土佐の武市半平太が塾頭をつとめた「士学館」。
 鏡心明智流の「士学館」は幕末期の江戸3大道場の一つで、南八丁堀の「あさり河岸」際、今の新富1丁目8番地あたりにあったとされています。
 始祖は安永年間(1772〜81)の人、桃井八郎左衛門。元は大和郡山藩柳沢家に仕えていたのですが、武芸修行に打ち込み鏡心明智流を立て江戸で道場を開きました。この桃井道場が4代目の春蔵が士学館の師範になってから大躍進を遂げ、千葉周作の玄武館、斎藤弥九郎の練兵館と並び、江戸3大道場のひとつと言われるようになったとか。

 あさり河岸って、どこ?ここは先人のご苦労に敬意を表しつつ、あっさり道を譲ります。(笑)
「散歩の記録」と題するホームページに「幕末の江戸3大道場を探す」の1篇があり、写真や古地図を添えた3道場の詳しい探索記が載っていて、もはや付け加えることなし。とにかく最近は八丁堀同心そこのけの探索の名人がいるのですね。
 解説文には、こうあります。「近江屋版の地図を入手した時に京橋南の地図を確認すると、あさり河岸の記述はありませんでしたが、桃井春蔵の名前を見付ける事が出来ました……」。
 で、その後ようやく新金橋際の公園に建つ「蜊(あさり)河岸の説明文」に辿り着くまでのことが書かれています。

さて、幕末江戸の町道場について語られるとき、きまって引かれる言葉が「技の千葉」「力の斎藤」「位の桃井」とか。(これに幕府の旗本・御家人が多く入門して大道場となった心形刀流・伊庭道場を加え4大道場と言いました)
ところで、幕末の桃井道場で4天王と称されたのが上田馬之助、坂部大作、久保田晋蔵、兼松直廉。上田は肥後新田藩士で、維新後は草創期の警視庁剣道界で逸見宗助と並んで東西の両大関とうたわれたそうです。
 この逸見宗助がやはり士学館に学んだ剣客で、佐倉藩の武術師範の家の出。維新後は没落士族の身すぎ世すぎで、製茶事業に携わっており、佐倉市史にも名を残しているそうです。
 佐倉藩の士族授産事業は主として製茶・製綿・製靴の3種からなっていて、製靴業の西村勝三については築地篇(魚河岸通信)第2回「靴業発祥の地」でふれました。歩みこそ異なれ、当地はまた旧佐倉藩士の活躍の舞台でもあったのですね。
 なお、江戸4大道場や近藤勇の「試衛館」など江戸町道場の剣と人については、昨年末に刊行された渡辺誠『幕末剣客秘録』(新人物往来社)が好個の読み物で、詳しい記述は同書に譲ることにします。




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