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ま、おおざっぱに言えば、今や新宿と言えばヨドバシカメラですが、一時代前はむろん風月堂そして中村屋。ところが、実はその中村屋のルーツは本郷なのですね。最近読んだ『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』(白水社)に書いてありました。著者は気鋭の学究、中島岳志氏30才。本書で昨年末に第5回大仏次郎論壇賞(朝日新聞主催)を受賞しています。
さて、中村屋が開業したのは本郷の東京帝大赤門前。信州穂高から東京に出てきた相馬愛蔵・黒光夫妻が居抜きで買った店で、前の店主・中村萬一の苗字の屋号をそのまま引き継いだというのです。
新富じゃなく新宿、それも中村屋のルーツがどうであろうと無関係だろうが! と考えるのはせっかちですよ。現在、あんパン、ジャムパンと並んで「3大菓子パン」の一つに数えられるクリームパンは、木村屋のあんぱん(第85回「鉄舟とあんぱん」参照)に遅れること30年の1904年、あの日露戦争のあった年に、開店から3年後の本郷時代の中村屋によって生み出されたというのです。
懐かしの味、クリームパン。今ではメロンパンにすっかりお株を奪われているけれど、あんパン、ジャムパン、クリームパン無かりせば、ぼくらの少年時代はどんなに味気ないものになっていたことか(笑)。
もっとも新宿中村屋と言えば、なんといってもインドカリーが売り物。今でも日に2000食は出るそうで、その発案者がこのR・B・ボース。インド独立運動の闘士にして愛蔵・黒光夫妻の娘婿だった人です。昭和2年(1927)、町の洋食屋のカレーが10銭の時代、中村屋は80銭もしたが、それでも日本人にとって衝撃的な味は「恋と革命の味」として一躍評判となり、中村屋のカリーを食べるのは「学生や文化人のステータス」とまで言われたそうです。
……そんなこんなのエピソードは朝日新聞の1月21日号別刷りに書いてありましたし、 詳しくは同店のHPをご覧ください。
http://www.nakamuraya.co.jp/index.html
注:それまではカレー粉とともに小麦粉をいためてルーを作る英国流に福神漬けを添えるなど日本風にアレンジされていた。ボースは純インド式にこだわり、中村屋ではカレーでなくカリー。現在は税込みで1365円です。
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