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第1回●「築地魚河岸三代目」を読む




朝の築地場内市場は
活気にあふれる

 新富と言えば築地。旧築地川を挟んで隣町にあたる築地の誕生、変遷を抜きにしては新富の歴史は語れません。森まゆみさんの大活躍ですっかりメジャーになったタウン誌『谷根千』(谷中・根津・千駄木)ふうに言えば、銀座の後背地である「築地・新富・八丁堀」は一心同体の街なのです。で、おいおい築地周辺のよもやま話を書き連ねていこうと考えていたのですが、下手な考えナントやらで・・・ そんな「下書き」から、早くも半年がすぎてしまいました。よって第1回は季節はずれの春の話でスタートです。

 歯医者の待合室でたまたま手に取った『ビッグコミック』。誰か前の患者が置いていったのでしょうか、最新号ではありません。わずかな待ち時間でパラパラとページを繰るうち、タイトルにつられ、つい「築地魚河岸三代目」という一編を読んでしまいました。
 面白い。感動した! ‥‥つい小泉調になってしまいそうで、あわてて口元を抑えたのです。
 いや、正確に言えば、あわてて抑えたのは目元。感動的な話の展開に引き込まれ、恥ずかしながらつい涙ぐんでしまったのです。
 これが、とにかく「いい話」。時代小説の名手、浅田次郎あるいは乙川優三郎、古くは山本周五郎や藤沢周平の掌編小説を思わせる、さわやかな人情譚なのです。
 魚河岸が舞台の連載漫画で、ボクが読んだのは「さより」の巻。夫は、元は江戸の古典芸能史?を研究する学究、妻は粋筋の女という、寿司屋の異色夫婦をめぐる物語なのです。(ゴメンナサイ、詳しい人物設定は忘れました)
 劇画世代とはいささかトシが離れているので、平素漫画誌を読むことはほとんどなく、原作者名も漫画家名も知りません。が、コンテンツはしっかりしていて、「さより」を食べたくなってしまいました。
 さよりの皮焼き、そして澄まし汁が登場します。春を告げる「さより」のほのかな香りと味が匂い立ってくるような一編でした。
 大江戸線の開通以後、どっとグルメのマダム、小マダムを中心とする素人筋で賑わう築地ですが、春の一日、足を伸ばして生きのいい魚を食してみたくなりました‥‥。



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