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第25回●花梨(カリン)酒の作り方





 三浦哲郎と言えば『忍ぶ川』はじめ叙情的な短篇の名手として知られる作家。その三浦さんが、このところ毎年カリン酒を造っているようです。なんでも三浦さんは、学生時代から声のかすれがひどくて、30年ちかく前に地方へ講演旅行に出かけた際、そのかすれ声を初めて聞いた同行の先輩作家から、「おい三浦、おめえは来年喉頭癌で死ぬぞ」と言われたそうです。
 ところが皮肉にも、死を予告した先輩作家の方がそれからしばらく後に癌死した一方、三浦さんはある年に郷里の知人から津軽名産のカリン酒を贈られて以来、昼に夜にカリン酒をたしなみつつ、かすれ声で元気に執筆や講演活動を続けているそうです。(随筆集『狐のあしあと』、講談社刊)
 カリン酒は喉(のど)の良薬だとされています。何を隠そう、ぼくもまた昔から喉が弱くて、声の調子が出ない時などのど飴のお世話になるのですが、決まってカリン味です。あのさわやかな香りが何とも言えないのですね。

 で、今年はカリン酒に挑戦してみよう、と意を決しました。しかも、青果店での調達ではなく、自然の恵み、区民共有の幸(さち)である、あの築地川公園のカリンの樹から2〜3個いただく。
 さて、その製法。カリンは水分も少なく、果実が大変堅いためにスライスするのも苦労しますが、作り方はいたって簡単。皮付きのまま果肉を適当な大きさに切り、これを広口の瓶に氷砂糖と一緒に入れて、ホワイト・リカーで漬け込む。ま、梅酒と同じでしょう。なおアルコールが苦手の人は、蜂蜜だけで漬け込んだりする、とも三浦さんは書いていました。

 ついでながらサイトを覗いてみました。
 カリン(花梨)、別名マルメロは中近東が原産で、中国を経て1600年頃日本に渡来したバラ科の落葉樹です。花は淡赤色で4〜5月上旬に咲くが、リンゴやナシが一芽からたくさん咲くのと異なり、先端に一花ずつ花をつけることが特徴。秋には黄金色の実がなり、何とも言えぬ芳香を放つそうです。  というわけで、おもしろい利用法が紹介されていました。カリンの強い香りを生かし、「果実をそのまま置けば、玄関、部屋や乗用車内の香りづけになる」と言うのですね。

 ……おっと、ここまで書いてしまうと、築地川公園のカリンの実危うし! もっとも「次第に葉は落ちていくが、実が落ちることはない」というので、収穫するには木登りの覚悟が必要なようですよ、念のため。(真之介)


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