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第28回●築地警察のお世話になる


 机上の古ぼけた『築地警察署史』が、ここ2週間の愛読書でした。昭和48年夏に刊行された本書には渡邊恒雄名の格調高い「発刊のことば」が巻頭にあって、曰く「先人の幾多の辛労苦闘と、たゆみない精進努力によって築きあげられた伝統ある築地警察の歴史を顧みて、この史実を編さんし、今後私どもの進むべき理想のよすがとしたい……」云々。
 また、百年の歴史の流れの中にある世の移り変わりの激しさに驚く……古い時代の銀座や築地、明石、新富町などのことを改めて知る……ともあって、その言葉通り、おカタい警察の記録・調書づくりの枠を超え、明治・大正・昭和の社会の動きを知る読み応えのある世相史となっているのですね。A5判(教科書のサイズ)で650ページ、堂々たる大著です。
 たとえば第2章「明治初期の警察」、その1「町の移り変わり」の項の〈世相余録〉。

○有名飲食、飲料店
文明開化は日本人の飲食物、飲料も洋風のものが暫時現れてきた。明治6年ごろ銀座を中心とした有名店は次のとおり。
・西洋料理 釆女町(現銀座5丁目)の西洋軒(後の精養軒)、築地の日新亭(場所不詳)
・洋酒 入船町の伊勢与
・ラムネ 新富町の三川屋
・鳥精肉 小田原町の東国屋
・牛肉割烹 数寄屋河岸の千里軒
・パン 鉄砲洲のつた本

 へーえ、新富町の三川屋、そんな店があったのですか。
 そしてまた「○男女混浴の禁止」なーんていう見出しもあって、そこには「明治8年9月東京府庁から男女混浴を禁止する旨の布達が出された」ということがさりげなく書かれているのですね。
 おやおやそんな布達が。江戸時代は男女混浴だったし、なに昭和の御代だって25年ほど前に鹿教湯温泉で湯につかっていたら、いきなり近在の農家のおばちゃんとおぼしき元美女軍団がどやどやと湯船に入り込んできて閉口したことがあるので、男女混浴の美風?については知っていたのですが。

 なおまた街灯のない時代なればこそ、「○こんばんちょうちん」という項も。
 明治2年11月、東京府では「無灯の夜行」を禁じたというのですね。つまり夜道を出歩くときは「ちょうちん」を用いろ、というのです。で、この措置により丸提灯に「こんばん」と書いたものが売り出されるようになった、とあるのです。
 郊外の駅から、深夜の帰宅。後ろから無灯火で追い抜いて行く自転車に腹立たしい思いをすることが往々にあります。駐車違反の取り締まり強化もいいけど、この際、「無灯の夜行」を厳罰に処すというお触れを出してほしいですなあ。

 ところで冒頭の御仁、あのべらんめえ調のナベツネ御大とは同名異人、第73代築地警察署長にして署史編集委員会の委員長です、念のため。


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